chapter 8~ chapter 8 “姉のこと” ~ 私には兄の上に姉も居る。 一見おとなしそうに見えるが芯のしっかりした、いかにも長女らしい人だ。 年も離れていたのでとても可愛がってもらっていた。 私が中学生だった頃、姉は社会人になっていた。 仕事が終わると必ず「今から帰るね」と電話をくれた。 簡単な食事を作って待っているとすごく喜んでくれた。 人に喜んでもらえる事がある、人を喜ばせる事が出来る、 それはとても幸せな事だと思う。 私でも役にたてていると感じて本当に嬉しかった。 私は出来るだけ夕飯を作って姉を待った。 姉は帰りにケーキを買ってきてくれたりした。 私が作った夕飯を一緒に食べ、姉が買ってきてくれたケーキを一緒に食べる。 姉が居てくれた事は私にとって唯一の救いだった。 姉とは色んな話をした。学校での事も話した。私の話を聞いて姉は 「お姉ちゃんから見たらあんたは太陽みたいに明るくて楽しい子なのに どうしてそんな事になっちゃうんだろう」と言って泣いた。 自分の為に泣いてくれる人が居る、それはとてもありがたい事だと思う。 私でも好かれる事が出来ていると思って嬉しかった。 苦しくて“もう死んじゃってもいいや”と思った事もあった。 でももしも、私がそんな事をしたらきっと姉は 『話を聞いていたのに、何もしてあげられなかった』と言って 自分を責めるんだろう。そう思ったら出来なかった。 姉が私にしてくれる事は充分だった。 私の事なんかで姉を悲しませ、傷つける事になっちゃいけない。 私は私の、たった1つの大事なものを必死で守ろうとしていた。 ◆chapter 8について(日記) へ ◆chapter 9 へ |